猫の行動学(行動診療)のセミナーに参加しました
2018/09/23
2017年10月5日(木)坂崎清歌先生が運営している「猫とのコミュニケーション教室」Happy Catにて開催されたセミナー(ステップアップ講座)に参加しました。
今回の講座のテーマは、『動画を見ながら猫ちゃんのボディランゲージを読み取ってみよう!』。
うちの子の気になる行動を動画に撮って、動物行動学専門の先生に解説していただくという大変貴重な機会でした!
講師は、行動診療を専門にされている獣医師の藤井仁美先生です。
今回はうちのにゃたちゃんとツナちゃんの動画を元に藤井先生からいただいたアドバイスをブログで紹介する許可をいただきました。
私自身も今回のセミナーではじめて「行動診療」について知り、最初は難しそうなイメージがありましたが、猫ちゃんの気持ちや行動の意味を知り、猫ちゃんとよりよい関係を築く上で、「行動診療」は、大変有効な手段だと感じました。
猫ちゃんの困った行動でお悩みの方に「行動診療」という選択肢があることを知っていただくきっかけになれば幸いです。
もくじ
行動診療とは
行動診療とは、問題となる行動(問題行動)に悩んでいる飼い主に対して、犬や猫の行動から原因を探り、対処方法(生活指導や行動治療)を提案するカウンセリングです。
問題行動には2種類あります。
- 動物として正常な行動であっても、人間と暮らす上で飼い主が問題だと思う行動
- 動物の種・個体としても正常な範囲を超えた異常な行動
現在、行動診療が注目されている背景には、犬や猫の室内飼いが主流となったことが大きく関係しています。
猫ちゃんの問題行動の一例
猫ちゃんの問題行動は、ストレスによるものといわれています。
- 家の中での不適切な排泄
- 人間に対する攻撃
- ネコ同士のけんか
- 家具をひっかく
- 過剰に鳴く
- ウールなどを食べる
- 「獣医動物行動研究会統一質問用紙:猫」より
猫ちゃんのストレスになる要素
室内飼育によるさまざまな要因が猫ちゃんのストレスになります。
- 外出(車や電車での移動)
- 来客
- 環境の変化(引っ越し・模様替え)
- 多頭飼育
- ペットホテル・入院
- 騒音
- キャットストレス.com「猫のストレスになりやすい環境」
行動診療セミナー『動画を見ながら猫ちゃんのボディランゲージを読み取ってみよう!』レポート
今回のセミナーは、次の流れで進行しました。
- セミナー受講前の準備
猫ちゃんの動画を撮影
アンケートを提出。 - セミナー当日
自己紹介(うちの子の紹介)
参加者の方々と動画を視聴
ディスカッション(質疑応答)
藤井先生に解説していただく
動画を撮影
事前にうちの子の気になる行動を撮影した動画を提出します。
動画はiPhoneで撮影しました。
アンケートを提出
受講前に藤井先生からアンケートの提出の依頼がありました。
質問事項は次の通りです。
- 家族構成
- 自宅環境(マンションか戸建てか?部屋数など
- 猫さん(多頭飼育なら全ての猫さん)の情報(名前、猫種、年齢、性別、飼い始めた年齢、可能であれば経歴や猫同士の相性など)
実際の行動診療で使用される質問用紙は、もっと細かく猫ちゃんの行動や生活習慣について記入します。
にゃたちゃんとツナちゃんのプロフィール
うちの子たち、にゃたちゃんとツナちゃんのことを簡単にご紹介します。
名前 | にゃた |
性別 | 男の子 |
種類 | アメリカンカール |
年齢 | 2017年10月で満3歳 |
うちの子になったきっかけ | 生後2か月の頃に最寄りの動物愛護センタより譲渡。 |
去勢手術 | 済み |
名前 | ツナ |
性別 | 女の子 |
種類 | さび猫 |
年齢 | 2017年8月で推定1か月(動画撮影時2か月) |
うちの子になったきっかけ | 自宅周辺で数日間ひとりで鳴いていて、近所のお宅の車のボンネットの中に入ってしまい、救助したことがきっかけでうちの子になる。 |
避妊手術 | 未実施(これから) |
先住猫にゃたちゃんと子猫のツナちゃんの相性
相性はよい方だと思います
最初はにゃたちゃんが怖がってツナちゃんを威嚇していましたが、ケージを用意してお互いのパーソナルスペースを確保してからは、同じ部屋で過ごせるようになり、少しずつ距離が縮まりました。
ツナちゃんを保護してから約1週間でケージなしで一緒にお留守番ができるようなりましたが、最初のにゃたちゃんの怖がり方からはこんなに早くケージなしにできるとは想像できませんでした。
今までひとりでお留守番していた時は、いつも自分のケージに運んで遊んでいたお気に入りのペンギンのぬいぐるみ
ツナちゃんがケージに入っている間、毎日ツナちゃんのケージの前に持ってきてあげていました。
今はこのように仲良く一緒に寝たりもします。
一緒にくっ付いて寝るときは、ツナちゃんから近づいて行きます。
ツナちゃんを気にかけるにゃたちゃんの行動
にゃたちゃんは、ツナちゃんを気にかけていると思われる行動をとります。
- おもちゃで遊んでいるツナちゃんを見守るにゃたちゃん
- 部屋の戸を開けた時、ツナちゃんより先に部屋から飛び出さない
(ひとりだった頃は、戸を開けたら弾丸のように飛び出していましたが、現在はにゃたちゃんがツナちゃんより先に部屋から出て来ることはほとんどありません) - ごはんやおやつをツナちゃんにとられても、取り返そうとしない。
にゃたちゃんは、ごはんやおやつをとられても、怒ったり取り返そうとしません。
(現在はツナちゃんはごはんの時は自分からケージに入って食べるので、それぞれ落ち着いて食べられるようになりました)
にゃたちゃんとツナちゃんの気になる行動
にゃたちゃんとツナちゃんの気になる行動とは、1日に1回くらいの頻度で、にゃたちゃんがツナちゃんを羽交い絞めにして、噛んだり、おしりをなめたりすることです。
ツナちゃんは明らかに嫌がっていますし、噛まれた時は「ギャー」という叫び声が聞こえることもあるので、仲裁に入る(見に行って、声をかけるだけでやめます)のですが、そうすると、にゃたちゃんは、今度は私の腕や足に飛びついてきたり、噛んできたりします。
猫ちゃんの気持ちを読み取るポイント
猫ちゃんがどのような気持ちなのかを読み取るには、表情やしぐさを細かく観察する必要があります。
藤井先生に動画を見るときのポイントを伺いました。
- 目つき
怒っている時の目つき・きつい目つきになっていないか(攻撃的かどうか) - 耳の位置
耳が後ろを向いていたり、寝ている状態(イカ耳:怒っている時・警戒している時の耳)になっていないか
興奮しているとき、怒っている時のにゃたちゃんの特徴
セミナー後、改めてにゃたちゃんの行動や表情を注意して見ていたところ、興奮している時・怒っている時のにゃたちゃんは、次の特徴があることを改めて確認しました。
- 目つきが怒っているように見える
- 耳が寝ている(途中から寝ている状態に変わる)
- しっぽをパタパタさせてイライラしている
- 興奮して噛んでくる時は、たいてい深夜0時以降
次の写真では、リラックスしている時と、興奮している時の表情の違いがわかります。

お気に入りのおもちゃで遊んでリラックスしている時

猫じゃらしで遊んだ後、満足している時

自分から椅子に座っておやつをおねだりしている時

興奮して飼い主に噛みついている時
動画から読み取れるにゃたちゃんとツナちゃんの気持ち
にゃたちゃんとツナちゃんの動画を藤井先生に解説していただきました!
- にゃたちゃんは目つきや耳の位置からみると、攻撃しようとはしていない。一生懸命何かしようとしている。
- ツナちゃんは嫌がっているので、手や足が出ている。耳は少し寝ている。
先住猫が子猫のおしりを舐めるのは、お手入れの一環
にゃたちゃんがツナちゃんのおしりを舐めるのは、お手入れの意味合いがあり、猫として自然な行動とのことなので安心しました
- にゃたちゃん「おしりをなめてきれいにしてあげたい・においを消してあげたい」
→ツナちゃんが嫌がっているのにやめない(自己満足・執着している)
- ツナちゃん「もうやめてほしい」
→しつこくされて嫌がっている
ふたりの気持ちがかみ合っていないことが問題のようです。
飼い主の私に噛みつくのは「転位行動」
飼い主の私が仲裁に入った後、私に噛み付いてくることがあります。
これは、「ツナちゃんが思うようにやらせてくれないので、にゃたちゃんは飼い主にイライラをぶつけている」気持ちの表れということでした。
転位行動とは
動物が攻撃か逃避の選択といった葛藤状況に置かれた時に解発される、全く別の第三の行動
Wikipedia
猫ちゃんの行動改善のために飼い主が行うべき対処方法
- 猫ちゃんが気持ちを切り替えることができる遊びを活用する
遊び(例:ボールで一緒に遊ぶ)
パズルフィーダー(おやつやフードが出てくるおもちゃ)
クリッカートレーニング - ツナちゃんが叫び声を上げる前に飼い主が介入する
ツナちゃんが「ギャー」というと、飼い主が来ると学習してしまう(飼い主の気を引くためにツナちゃんを噛むようになる)可能性がある
介入を続けて悪化する場合は、タイミングが適切ではない。 - ツナちゃんが逃げられる場所(隠れられる場所)を用意する
逃げ場所は複数(ふんだんに)用意する
うちの子の行動改善のためにアドバイスを実践!
セミナー受講後、藤井先生から頂いたアドバイスは、次の2点でした。
- ツナちゃんが叫び声をあげる前から様子を伺い、タイミングを見計らって介入する
- にゃたちゃんのツナちゃんへの執着から気を紛らわせるために、にゃたちゃんが好きなおもちゃ・遊びを活用する
以上の2点を同様の状況が発生した時にすぐに対応できるように意識しました。
先日、実際に試した遊びは「ボール遊び」です。押すと音が出るボールでにゃたちゃんの注意をひき、ボールを遠くに投げて追いかける遊びを繰り返しました。

音が出るボールが気になるにゃたちゃん
ねこじゃらしは、ツナちゃんが飛びつくと、にゃたちゃんは遠慮して遊ぼうとしないので、ボール遊びにしました!
おもちゃで遊んだ後は、にゃたちゃんは、ツナちゃんがそばに来ても、羽交い絞めにしようとしたりせず、背中を舐めてあげていました (=・ω・=)✧
行動診療専門の獣医師・藤井仁美先生
藤井仁美先生は、ペット⾏動カウンセラーであり、日本でも数少ない「獣医行動診療科認定医」です。
現在は「代官山動物病院」、「自由が丘動物医療センター」で藤井先生のカウンセリングを受けることができます。
藤井先生の行動診療については、次の記事に詳しく掲載されています。
キャットストレス.com
藤井先生が執筆・監修をされているウェブサイト「キャットストレス.com」では、かわいいイラストと、読みやすいコラムで、猫ちゃんのストレスケアについて学ぶことができます。行動診療をはじめて学ぶ方必見です!
「ストレスリスクチェック」は、6つの簡単な質問に答えることで、猫ちゃんのストレスの度合いを確認することができます。
まとめ
今回のセミナー『動画を見ながら猫ちゃんのボディランゲージを読み取ってみよう!』で、私自身もはじめて「行動診療」を学びました。
20秒足らずの短い動画ですが、たくさんの情報が詰まっていることに驚きました!
うちの子の行動を動画に撮って、観察し、藤井先生にアドバイスを頂き、さらに自分で考えることで、
- 猫ちゃんの行動を意識して見ることの大切さ
- 人間にとっては何気ないことも、猫ちゃんにとってはストレスになることがある
- 猫ちゃんのストレスとなる要因は、飼い主が気づいて、環境を整えることで取り除くことができる
- 猫ちゃんの問題行動は、飼い主が正しく認識し、適切な介入を行うことで改善できる(変化が見られる)
ということを、体験を通して学ぶことで理解が深まり、実感することができました。
今まで動物病院は、ワクチンや健康診断、ケガや病気の治療の機会がなければ利用しようと思うことはなかったので、猫ちゃんの行動で困ったことが起きた時、改善できないまま悩むのではなく、獣医さんに気軽に相談できる「行動診療」という選択肢を知ることができて本当によかったです。
「猫」という動物について正しく理解し、うちの子ともっと仲良くなるために、これからも行動診療、動物行動学を勉強します!